― 変動の激しい業界を生き抜くための実務的戦略 ―

 

株式会社ディーエムシーのコラムをご覧になっていただきありがとうございます。
本日は、景気変動や外部環境の影響を強く受ける 飲食業の資金調達 について、その特性・課題・改善策を踏まえて実務的に解説します。

飲食業はサービス業の中でも圧倒的にキャッシュフローが不安定と言われます。理由は、仕入れ・人件費・家賃などの固定費が常に発生する一方、売上が季節・天候・客層の変化によって大きく上下するためです。また、開業直後に多額の初期費用が必要で、その後も店舗維持費や設備更新費が続くことから、資金需要が極めて大きい業種でもあります。経営者の多くが、日々の売上よりも「今月をどう乗り切るか」「来月の仕入れ資金をどう確保するか」という視点で経営しているのが実情です。

しかし、飲食業の資金繰りが厳しいのは決して特殊なことではなく、業界の構造そのものが資金不足になりやすくできています。だからこそ、経営者が「資金調達の選択肢」を正しく理解し、状況に合わせて適切な手段を選ぶことが、継続・成長のための最重要ポイントになります。

■1.飲食業が資金繰りに悩みやすい理由

飲食業の資金繰りの厳しさは、いくつかの構造的要因に起因します。まず、食材の仕入れは現金または短期サイクルでの支払いとなり、売上に比べて支払いが先行する傾向があります。売上の変動に連動しない形で仕入れ・人件費・家賃・光熱費といった固定費が発生するため、繁忙期と閑散期の差が支払い能力に直結し、キャッシュフローは常に緊張状態に置かれます。また、営業時間の制限や物価の上昇、人材不足など外部要因にも大きく左右されるため、経営の安定性を確保するには資金調達力が不可欠です。

さらに、店舗を維持するためには定期的な設備更新や小規模改修も必要であり、製氷機や冷蔵庫などの設備トラブルは突然発生します。こうした突発的な支出は数十万円単位であることが多く、十分な資金を確保していないと店舗運営に支障をきたし、売上の機会損失にもつながります。飲食業では「現金が尽きた瞬間に事業が止まる」という現実を常に意識しなければなりません。

■2.飲食業で利用できる資金調達の種類と特徴

飲食業で利用できる資金調達方法は幅広く存在しますが、それぞれ適したタイミングや目的が異なります。銀行融資は最も基本的な手段であり、業歴や実績がある店舗であれば比較的利用しやすく、運転資金としても設備資金としても活用できます。ただし、赤字決算が続いている場合や税金滞納がある場合は審査に通りにくいことがあり、スピード感も不足しがちです。

これに対し、ノンバンク系のビジネスローンは審査スピードが早く、売上の波を吸収するための短期資金として非常に効果的です。売掛金を資金化するファクタリングは、飲食業では売掛が多くない店舗もありますが、企業向けのケータリングや仕出し事業、法人向けフードサービスを展開している場合には利用価値があります。カード売上を前倒しで資金化する「カード売上ファクタリング」も飲食業と非常に相性が良く、即日で資金調達できるケースも少なくありません。

また、飲食業で見逃せないのがリースや割賦契約の活用です。厨房設備、POSレジ、空調、冷凍冷蔵設備などは高額でありながら耐用年数が限られているため、購入ではなくリースを選択することで初期費用の負担を軽減し、毎月の支払額を一定にしてキャッシュフローの安定を図る戦略が有効です。補助金や助成金も重要な資金源で、特に小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金は飲食店の設備導入・販促活動との相性が良く、多くの事業者が活用しています。

■3.飲食業に特に適した資金調達の実務的ポイント

飲食業では、資金調達手段を単独で使うより、状況に応じて組み合わせることで最大の効果を発揮します。例えば、売上が大きく上下する季節性の強い店舗では、月々の固定費を抑えるためにリースを活用しながら、突発的な資金不足が生じた際にはカード売上ファクタリングやビジネスローンで短期資金を補うといった柔軟な資金設計が欠かせません。

また、飲食店の資金繰りでは「売上の先行管理」が非常に重要です。予約状況、イベント、天候などによって売上が変動するため、売上予測と支払計画を細かく管理し、資金不足が発生する前に手を打つことが経営安定につながります。特に、繁忙期直前に十分な仕入れ資金を確保できていないと、販売機会を逃すという大きな損失につながるため、前もって資金調達を検討することが大切です。

さらに、飲食業は人件費の比率が高く、人材確保のための待遇改善や採用活動にも資金が必要です。採用強化、研修、福利厚生の充実など、従業員への投資は長期的な売上増加にもつながり、資金調達の目的として非常に有効です。資金調達というと「資金繰りの穴埋め」というイメージを持ちがちですが、実際には投資と成長を支えるための重要な手段であり、前向きに活用する価値があります。

 

■4.資金繰り改善と経営安定化のための視点

飲食業で資金調達を成功させるためには、日々のキャッシュフロー改善と経営数値の透明化が欠かせません。まず重要なのは、売上・支出・利益を正確に管理できる体制を整えることです。POSデータや会計ソフトを活用し、経営者が常に現状を把握できる状態をつくることで、資金調達の交渉力は大きく向上します。金融機関や支援機関が最も重視するのは「正確な数字」と「将来の見通し」であり、その精度が高いほど有利な条件を引き出せます。

また、客単価・回転率・原価率・人件費率といった飲食特有の指標を継続的に改善することで、資金需要そのものを下げることも可能です。特に原価管理は利益を直接左右するため、仕入れ先の見直しやメニュー構成の調整などを行うことで、安定的な経営基盤を築くことができます。こうした内部改善は資金調達と並行して行うべき重要な取り組みです。

■5.まとめ 飲食業の資金調達は“守りと攻め”の両面で活用できる

飲食業は変動が激しく、突発的な支出も多いため、常に資金繰りが試される業種です。しかし、適切な資金調達手段を理解し、状況に応じて使い分けることで、店舗の安定運営だけでなく、設備更新、メニュー開発、店舗拡大といった前向きな成長戦略にもつなげることができます。

資金調達は単なる“赤字補填”ではなく、飲食店の価値を高め、未来の売上を創出するための攻めのツールです。適切なタイミングで必要な額を調達し、確実に回収できる仕組みを作ることで、飲食店経営は安定し、長期的な発展が可能になります。

 

株式会社ディーエムシーでは、飲食業の資金繰り、ファクタリングにおいて、さまざまなニーズに対応したサポートを行っています。資金に関するお悩みや相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。