— 燃料高騰・人材不足時代を乗り切るための実践ガイド —

 

株式会社ディーエムシーのコラムをご覧になっていただきありがとうございます。
本日は、中小企業の中でも特に資金繰りが厳しいと言われる 「運送業の資金調達」 について、全体像から実務的なポイントまで、経営者の視点で詳しく解説していきます。

運送業は売上規模が大きくても、

  • 燃料価格の変動
  • 車両購入・修理費の負担
  • 人材確保のための給与アップ
  • 下請け構造による価格交渉力の弱さ
    などにより、利益率が低く資金繰りが悪化しやすい業種 です。

しかし逆に言えば、正しい資金調達手段を理解して活用することで、
資金繰りの改善だけでなく、
車両増車・事業拡大・人材投資
などの前向きな成長にもつながります。

 

■1.運送業が資金繰りで苦しみやすい理由— 業界特有の構造を理解する

業界特有の構造を理解する

運送業の資金繰りが厳しいのは、経営努力だけでは解決できない“業界構造”が背景にあります。

① 燃料価格の乱高下

燃料費は売上の20〜35%を占めることが多く、原油高の影響を直撃します。
価格転嫁が遅いため、キャッシュフローは圧迫されがちです。

② ドライバー人件費の上昇

ドライバー不足は深刻で、人件費・採用費が年々上昇。
固定費が増えるため、資金繰りはさらに厳しくなります。

③ 車両購入・修理費が高額

新車トラックは1台500〜1,500万円。
修理・タイヤ交換も数十万円規模。
資金繰りには大きな負担です。

④ 下請け構造が多く支払いサイトが長い

運送業界は“売上の入金が遅い”ことが多く、

  • 支払い:当月
  • 入金:翌月末〜翌々月末
    というケースもあり、資金ギャップが大きくなりがちです。

こうした構造的な課題があるため、
運送業は資金調達の選択肢を多く持つことが必須
と言えます。

■2.運送業が使える資金調達の種類(全体像)

運送業が利用できる資金調達は多数あります。
特に実務で使われるのは以下です。

  • 銀行融資(運転資金・設備資金)
  • 信用保証協会付き融資
  • ビジネスローン(ノンバンク)
  • ファクタリング(売掛金の資金化)
  • 注文書ファクタリング
  • でんさい割引
  • 動産・車両担保融資(ABL)
  • リース会社による割賦・リース
  • 補助金・助成金の活用
  • クラウドファンディング(特殊ケース)

「入金サイトの長さ」と「突発的な支出の大きさ」から、
短期資金(つなぎ資金)での調達の比率が高い業種 である点が特徴です。

 

■3.短期資金を確保したい時の調達手段

運送業は、燃料代・外注費・人件費を“今すぐ”支払う必要があるため、短期資金が重要になります。

① ファクタリング(売掛金の即時資金化)

一番利用が多い資金調達手段。

  • 入金まで60日ある
  • 下請けなので入金サイトが長い
    などの場合でも、売掛金を先に現金化できるため資金繰りが改善します。

② 注文書ファクタリング

運送業特有の「繁忙期前に資金が必要」という場面で効果を発揮。
配車・下請け手配にかかる費用を先払いできます。

③ ビジネスローン(ノンバンク)

スピード重視の資金調達。
銀行とは異なり審査基準が柔軟。

④ でんさい割引

大手荷主との取引が多い企業は特に有効。
手数料も比較的低く、信頼性が高い。

■4.設備投資(増車・車両更新)向けの資金調達

車両購入は運送業にとって“最大の投資”です。

① 銀行の設備資金(最も王道)

長期返済が可能で金利も低い。
増車・事務所拡張・倉庫設備など幅広く対応。

② リース・割賦契約(初期費用が抑えられる)

車両に特化した資金調達。
月々の負担が一定になり、キャッシュフローが安定します。

③ ABL(車両・動産担保融資)

保有車両を担保にして資金化できる手法。
決算が厳しい企業でも利用しやすい。

■5.運送業に特に相性が良い資金調達トップ3

実務での利用頻度・効果の高さから見たトップ3です。

第1位:ファクタリング

入金サイトが長い運送業に最適。

  • 外注費
  • 燃料費
  • ドライバー給与
    など、当月支払いを安定させられます。

第2位:リース・割賦

車両コストを均等化できるため、資金繰りが読みやすくなります。

第3位:銀行融資(設備資金)

増車・車両更新に最も適した資金調達。
信用力アップにもつながる“基盤強化型”の調達です。

■6.補助金・助成金を活用した資金調達戦略

運送業は国や自治体の支援が多い業種でもあります。

代表的な補助金・助成金

  • 事業再構築補助金(設備投資)
  • 持続化補助金(小規模事業者の販路開拓)
  • IT導入補助金(運行管理システムなど)
  • 働き方改革推進助成金(労務環境改善)
  • 人材開発支援助成金(研修)
  • 省エネ補助金(燃費改善設備)

補助金はあくまで“後払い”ですが、
採択後にファクタリングや融資を組み合わせる
という高度な資金調達戦略も効果的です。

■7.資金繰り改善の実務ポイント

(キャッシュフロー改善策)

資金調達だけでなく、キャッシュフローの改善も必須です。

① 入金サイトの短縮交渉

荷主・元請けとの契約見直しで改善できるケースがあります。

② 経費の固定費化・平準化

リース活用はこの観点でも大きなメリット。

③ 下請け先への支払いサイクル見直し

④ 稼働率の最大化・空車率の削減

キャッシュフローに直結します。

⑤ 燃料費の共同購入や取引先の見直し

燃料コストは運送業の生命線。

■8.まとめ — 資金調達は“守りと攻め”の両方に活用できる

運送業は構造的に資金繰りが厳しい業種ですが、

  • ファクタリング
  • 銀行融資
  • リース
  • 補助金
  • 注文書ファクタリング
    など、多様な資金調達手段を組み合わせることで経営は大きく安定します。

また、資金調達は「赤字のときに使うもの」という誤解もありますが、
実際には 事業拡大や増車など“攻め”の経営にも使える重要な経営戦略 です。

 

株式会社ディーエムシーでは、運送業の資金繰り・ファクタリングにおいて
幅広い経営支援を行っております。

「資金繰りが苦しい」
「車両更新や増車を検討している」
など、お気軽にご相談ください。