十年一昔と言いますが、十年前の日本は「ファクタリング」の知名度は今よりも低く、聞いてもピンとくる人が少なかったと思われます。
今では名前を聞いたことがある人はかなり多くなったでしょうし、資金調達の手段の一つであると知っている人も多くなりました。
経営者であればほとんどの人が知っているはずですので、状況は一昔前とは変わっています。
海外と比べると国内ではやっと一般的になってきた感があるファクタリングは、元々は海外発祥のものですので、この回ではファクタリングの歴史について少しひも解いてみたいと思います。
海外におけるファクタリングの発祥と変遷
ファクタリングの原型は、資金調達というよりは支払い保証の手段として16世紀イギリスで発祥したとされています。
アメリカへの移住者がイギリスとの貿易において必要な物資を輸入する際に「ファクター」と呼ばれる者が仲介の作用を果たし、スムーズな取引に貢献したのが由来とされています。
17世紀になると、銀行が発行した請求書に担保性を認めるようになり、請求書を用いたファクタリングが行われるようになります。
18世紀にはいると、前述のファクターと呼ばれる仲介役は品物の保管や代金の前払いを担保するための信用調査なども担うようになったとされます。
取引相手の信用が増し安心感が高まることで、企業は設備投資に積極的になり、生産力があがるという正の循環が見られるようになります。
19世紀になると産業革命が起こり、イギリスがアメリカに工業製品を大量に輸出するようになり、その取引の際に売掛債権を担保にした代金の前払いが行われるようになります。
20世紀に入るとファクターは信用調査と資金提供に機能を集約し、現代のファクタリングに近い形で運用されるようになります。
当初はアメリカでこの形のファクタリングが広まり、その後フランスなどの海外諸国にも取引が拡大していきます。
この頃になると、ファクターは銀行に吸収されるようになり、銀行業務の一環としてファクタリングが盛んに行われるようになりました。
日本への伝来は1970年頃
ファクタリングが日本に入ってきたのは1970年代頃で、この頃はまだ知名度がかなり低く、ごく一部でしか利用されませんでした。
そのころ国内では手形取引が行われており、いわば慣行になっていたことからファクタリングの普及はなかなか進まなかったようです。
ただ、手形取引はいくつか問題点もあり、手形の発行にコストがかかることや支払い手段としては用いにくいこと、紛失や盗難のリスクがあるなど、使い勝手としてはそれほど良いとは言えないことに段々と気づき始めます。
その後1990年代前半に起きたバブルの崩壊により経済が後退すると、手形の取引は急速に減少していきます。
逆にファクタリングによる資金調達が段々と注目されるようになり、少しずつ知名度を上げていきます。
2000年代に入ると金融関連の法令が改正され、債権の譲渡取引がしやすい環境になります。
売掛債権が持つ財産的価値が再認識されるようになり、ファクタリング取引はビジネス関係者の間で認知度が上がっていき、より利用しやすい環境が整うこととなりました。
現在ではごく普通の資金調達手段として機能
その後、日本を含む世界ではインターネットが急速に発展し、決済手段も多種多様なものが登場し始めます。
当初はファクタリング取引も紙の契約書を取り交わして行われていましたが、近年では電子契約書による取引が可能になり、離れていても簡単に取引ができる環境が整っています。
これにより、以前は対面や郵送により行わなければならなかった作業がネットを介して瞬時に行えるようになり、ファクタリング取引も地理的要件に左右されなくなっています。
2020年に入ると決済手段の多様化はますます加速し、取引のスピードも格段に上がりました。
それに伴って資金需要が起きる頻度も増しますが、ファクタリングは迅速な資金調達が可能な手段ですので、時代にマッチした資金流通の手段として活躍しています。
この流れは今後も加速する一方で後退することは無いと思われますので、ファクタリングの有効性もさらに上がっていくことでしょう。
まとめ
この回ではファクタリングの歴史に視点を当てて見てきました。
元々は海外発祥の取引手法であるため、近代的なファクタリング取引も海外が先行し、国内で用いられるようになったのはだいぶ後になってからのことです。
当初は手形取引の慣行があったことも手伝いなかなかファクタリングが注目されることはありませんでしたが、その後手形取引の後退やインターネットの発展と共にファクタリングが注目されるようになり、今ではごく普通のビジネス取引として機能しています。
迅速性、確実性が強みであるファクタリングは今後も資金調達手段として重要な役割を果たすことが期待されているので、ぜひ注目して頂ければと思います。
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