ある程度の規模で事業を展開する場合、経営者だけでは回りませんから社員を雇用することになります。
社員は経営者のために働いてくれますが、経営者と被雇用者ではものの見方や思考が全く異なり、経営者と同じ目線になることはありません。
そのため経営者が持つ経営理念もなかなか会社全体に浸透しにくく、もどかしい思いをされている経営者の方が多いのではないかと思います。
この回では経営理念が浸透しない企業に共通する理由を探りながら、これを打破する方策を一緒に考えていきます。
目次
そもそも経営理念とは?
経営理念は、自分達の会社が何のためにその事業を行うのか、何のために企業としてその活動を行うのかという目的を明文化したものです。
似た概念に企業理念というものがあり、最近は特別分けて考えることが少なくなっていますが、企業理念はその企業の存在意義を表すもので、経営理念の上に立つ概念です。
その企業理念の元に、経営理念として何のためにその事業を行うのか、ということになるわけですが、どちらも非雇用者たる社員にはそもそも浸透しにくい性質があります。
現場の社員はその日の仕事をこなすことに精一杯で、経営理念のことにまで意識を延ばすことは難しいかもしれません。
そもそもそうした性質だということを踏まえつつ、次の項では社員に経営理念が浸透しにくい具体的な理由を見てみましょう。
経営理念が社員に浸透しない理由
経営理念が浸透しない理由はいくつかあるので以下で確認します。
経営理念を決めて満足してしまっている
経営者は多くの苦難を乗り越えて成功した存在ですから、明確な経営理念を持っている方がほとんどです。
これを例えば自社のHPに載せたり、採用活動の際に被面接者にアピールするなどして対外、対内的に浸透させているつもりになっているかもしれません。
しかし元々浸透しにくい性質ですから、この程度では経営理念が相手の心に突き刺さることはないでしょう。
分かりづらい、抽象的である
経営理念は経営者の頭の中にある概念を明文化するものですから、どうしても抽象的になる面は否めませんが、あまり分かりづらいと心に刺さりにくく、自分事として捉えるのが一層難しくなります。
下でも述べますが、経営理念を浸透させるには社員一人一人が自分事として考えてアウトプットできるようにする必要があります。
明文化して示す際にはできるだけ分かりやすくなるように配慮したいものです。
時代とのギャップが生まれている
企業理念と違い、経営理念は時代やニーズの変化に伴って形を変えていくべきものです。
しかし企業理念と同視されることが多くなった今日では、相当前の時代に設定された経営理念がそのまま引き継がれているケースが多いように思います。
根性論的な理念が示されている場合、合理性や柔軟な働き方などを重視する現代と大きなギャップが生じ社員に理解されないものになっている可能性があります。
創業者からの代替わりを契機にして経営理念を刷新するケースはよく見ますが、これにこだわらず必要と感じた時点で柔軟に刷新を図る姿勢で良いのではないかと思います。
経営理念を社員に浸透させるには?
経営理念は抽象化しやすいため、自社の社員に浸透させるには経営者自らが丁寧に説明し理解してもらう必要があります。
その理念がなぜ生まれたのか、その背景まで説明することで相手の心に落とし込むことができます。
加えて、社員一人一人が日々の仕事の中で経営理念を形にしてアウトプットできるようにすることで、より自分事として考えることができるようになります。
以下では社員に経営理念を浸透させるための具体的な方策について見ていきます。
社内セミナー等で経営者が理念を説明する
機会を捉えて、経営者が自ら経営理念を社員に説明できる機会を定期的に設けることができれば、浸透の足掛かりになります。
自社の社長の講和をしっかりと聞く機会はそうそうないので、社員の気持ちも引き締まります。
セミナーのような形であえて仰々しくすることで浸透圧力を高めることが期待できますが、セミナー形式が難しければ朝礼などのシーンを捉えて行うことでも効果はあります。
社内レターの発行
社内報や社内レターを発行し、経営者の考え方や理念を随時発信することで定期的に社員の目に触れさせることができます。
経営者自身が工夫を凝らして発行すると、社員から見て意外性があるなどの評価を受けて親しみを持たれる契機になるかもしれません。
大きな会社では広報部などが代わりに発行しているところもあると思いますが、必ず経営者のコラム欄を設けて社長自身の考えを伝えることができるようにしたいものです。
評価制度に組み込む
経営理念を理解し、これを日々の仕事の中で実践できた者が評価を受けられるように人事評価制度に組み込むと、経営理念を強力に浸透させることができます。
そのためには最初に経営理念の意図や真意をしっかり理解してもらわなければならないので、上の①の作業が足がかかりとして重要になります。
経営理念を日々の仕事の中で実践できた者が正しい評価を受けることが分かれば、社長が力説しなくとも自動的に社内に理念が伝わっていくでしょう。
評価を受けた者については②の社内報などで紹介することで、より社内全体に伝わりやすくなる相乗効果が生まれます。
自動で回る仕組みを整えることができれば、「こんなに力説してるのになかなか浸透しない!」と嘆くこともなくなります。
まとめ
この回では経営理念が浸透しない企業に共通する理由を見ながら、どうやって社員に浸透させていけるかを考えてきました。
経営理念はその性質上どうしても社員一人一人に浸透させるのは難しいので、経営理念があるのだから社員は理解して当然、というスタンスではなかなか伝わりませんし、理解もされないでしょう。
経営者と社員ではそもそも立ち位置が異なることを理解し、積極的に浸透圧を高めるような工夫が必要です。
足掛かりとしては機会を捉えて経営者が直接経営理念の意味や意図、創設経緯などを丁寧に説明することから始まります。
人事制度に取り入れたり、評価を社内全体に広めることで社員は経営理念を頭に入れた行動が自主的にできるようになるでしょう。
本章で見てきたヒントがお役に立てば幸いです。
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