・建設物価の高騰
昨今、エネルギーや食品等の値上げに関する報道がなされている。建設分野も例外ではなく、原材料不足やエネルギー価格の高騰に起因して建設物価が高騰している。
特に建設分野では、受注確定から契約及び材料の購入や外部委託の発注までに時間を要すことから、短期的に物価上昇が生じた場合、受注確定時の見積と必要な予算に乖離が生じることとなる。
そのため、資金繰りが悪化し円滑な企業活動ができない場合が散見される。

・物価高倒産とは
建設物価の高騰により、2022年度上半期に法的整理(倒産)となった企業に関する調査(帝国データバンク)によると、物価高による倒産が159件と、2021年上半期の75件の2倍超となっているそうです。この調査では、原油・原材料および仕入れ価格の上昇と、それを取引先への価格に転嫁できない値上げ難によって収益を維持できなくなって倒産に至るケースを「物価高倒産」と定義しています。

業種別の倒産件数をみると、物価高倒産のトップは設備業を含む「建設業(40件)」で、全体の約25%を占めています。さらに企業規模別では、負債5億円未満の中小企業が全体の約7割をあたっており、物価高の影響をもっとも強く受けているのは中小企業であることがわかります。

・物価高の対策と正しい資金調達
建設費上昇の状況とその要因から考えると、この物価上昇はすぐに解消される期待は薄く、当面は各建設事業において建設費上昇に対応していく必要があるだろうと思われます。

では、今後の建設プロジェクトを見据えて今できる事は何があるでしょうか。

1つは、基本計画段階で建設費を算出・提示する際に、予備費をきちんと見込んでおくことです。基本計画段階で設定した「建設予算」は一度設定されると、その後の事業収支全体の前提条件として取り扱われることになります。そのため、事業展開上で大きな意味持つこととなり、容易に変更することはできなくなります。よって、基本計画段階での建設予算には必ず予備費を設定して、その後の物価上昇や設計変更などに備えておくことが、事業リスクの低減に大きく寄与します。

もう1つは、事業進捗の途中であっても、可能な限り早い段階で建設費を減額する設計変更案を用意しておくことです。例えば設計中の場合でも、ゼネコン選定をする前ならば様々な設計変更を行うことができ、建設費上昇分を相殺する減額ができるかもしれません。工事途中であっても、工事初期段階であれば、設計内容を見直すことで建設費を減額できる可能性があります。

しかし、予備費を確保できない中小企業は多くあり、計画段階、事業進捗の途中でも資金繰りが悪化することが多いのが現実。

その際、銀行融資を待つのでは間に合わなく、最短で資金調達を進める策として最有力候補となるのがファクタリングである。

出来高請求の買取りや注文書の買取りにより一時資金を作り、計画を見直す時間を確保することはイレギュラーの多い建設事業においては重要なマネジメントではないでしょうか。

物価高が進行するいまこそ、スピード感のある資金調達スキルを確立させるのも一手であるといえます。